「ご家庭で不用になった家具や家電を、無料で不用品を回収します。お気軽にお声かけください」とスピーカーから聞こえてくる廃品回収者の声を、一度は聞いたことがある人も多いのでは? 思わず「無料で引き取ってくれる?」と喜んでしまいますが、実はそうではないことも多いのです。
軽トラにスピーカーを積んで、「地域の皆様、ただいまご家庭で不要になった家具や家電を、無料で回収に伺っております。お気軽にお声をかけてください」と大声で叫ぶ廃品回収車の声を、一度は聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
実はこの回収車、「無料で回収してくれるなら便利!」と思いがちですが、その多くが違法営業の業者なのです。しかも「無料回収」などというと聞こえはいいのですが、実際は料金を取られることがほとんどです。
スピーカーを積んだ廃品回収車の多くは違法
廃品回収車と取引をすると、自分自身も危ない!?
そもそも客から処分料をとって廃棄物を回収するためには、役所から「一般廃棄物処理業(収集運搬業)」の許可をもらう必要があります。しかし、軽トラでスピーカー営業をしている業者に廃棄物処理業の許可が下りることは、まずありません。
つまり、そうした業者の多くが違法営業なのです。もし、それを知っていて引き取ってもらった場合には、自分自身にも罪が課せられる可能性があるということを、肝に銘じておきましょう。
廃品回収車の違反行為は、こんなにあった
廃品回収車の多くは、一般廃棄物処理業の許可を持っていないという点で「廃棄物処理法違反」になるだけでなく、さまざまな違反行為をしています。
たとえば、冷蔵庫や洗濯機などの家電リサイクル品を引き取った場合は、「家電リサイクル法違反」になります。家電リサイクル品は、許可を得た業者が適正な手段で分解やリサイクルを行うよう、法律で定められているからです。
また、スピーカーから大音量で宣伝して回るのも、「拡声器使用違反」に問われます。拡声器を使う場合は、55デシベルもしくは65デシベル以下に抑えるという規制があるのです。
引き取ってもらった後も、問題があった!
廃品回収車が不用品を無料で引き取るケースも、まったくないわけではありません。しかし多くの場合は、「2,000円かかります」などと言われる場合がほとんどです。
「でも、2,000円で引き取ってもらえるなら手間が省ける」と思って品物を渡してしまうと、実はその後にも問題が潜んでいます。
業者は引き取った品物を再利用できる物は再利用し、できない物は分解するなどして、お金になる部品以外を処分します。この時、問題なのは「いったいどこにそれを捨てているか?」です。業者の中には山中に不法投棄したり、海外に不法輸出しているケースもあります。
万が一、不法投棄されているゴミが自分の所有物だったと判明した場合は、たとえ業者に任せたとしても持ち主が責任を問われることがあります。「そんなつもりはまったくなかった」と言っても、不法業者に託した時点で責任は発生してしまうのです。
不用品を業者に出す時は、「再利用や処分まで、安心して任せられる業者に頼むこと」が、とても重要です。
こんな不用品回収のトラブルの事例もある!
国民生活センターに寄せられる廃品回収車のトラブルには、こんなものもあります。くれぐれも注意しましょう。
無料と言われたのに、車に積んだ後で料金を請求されたAさんの例
不用品を回収してほしいと思いつつ、そのままになっていたAさん。近所を回っていた廃品回収車が「不用品を無料で回収します」と言っていたので呼び止め、引き取ってもらうことにしました。パソコンからテーブル、庭石まで、たくさん車に積んでもらって無事回収完了。「やれやれ」と思っていたら、「全部で3万円かかります」と言われ、Aさんはビックリ仰天しました!
「無料って言ったでしょう?」と詰め寄っても、その時点で書面では何も交わしていないため、まったく相手にしてもらえません。大変な思いをして庭石まで積んでしまったので、もう面倒くさくなってしまったAさんは、泣く泣く料金を払うハメになりました。
引越し前の足元を見られ、法外な値段を請求されたBさんの例
引越しの準備で忙しいBさんは、不用品をどうしようか迷っていたところ、「ご家庭でいらない物を無料で回収します」というスピーカーの声を聞き「これだ!」と思いました。
品物を見せたところ、無料と言っていたのに「5万円かかります」と言われ、まあ仕方がないかと了承。デスクから自転車、食器、パソコンといろいろ積み込み、5万円を払おうと思ったところで、なんと業者から「20万円ですよ」と吹っかけられたのです!
あらかじめ金額を言われたため、安心しきって書面での契約をしなかったBさん。今さら積んだものを元に戻す元気もなく、業者の言いなりになってしまいました。
不法な不用品回収業者の片棒をかつがないよう、十分注意を
このような不法な業者による不用品回収のトラブルに対して、行政はいま積極的に注意を促しています。環境省では、法に則った不用品回収業者に依頼し、適正に不用品を処分するよう、注意を喚起しています。
一般廃棄物処理業の許可を持たない業者に品物を渡すことは、たとえ自分が知らなかったとしても、犯罪の片棒をかつぐことになってしまいます。たとえ引越しや転勤前の忙しい時期だったとしても、自らが使っていた品物を廃棄する責任を有するのは、ほかでもない自分自身。「無料」という甘い汁に惑わされたり、近所を回る廃品回収車に安易に任せることなく、責任を持って処分するように心がけましょう。