ごみで悩んでいるのは地球だけだと思っていたら、なんと宇宙にもごみ問題はあったのです!こわれた人工衛星が、宇宙空間をフワフワと浮いていたり、はがれ落ちたロケットの塗装が、回収されないまま宇宙をさまよっていたり。その宇宙ごみが、危険な理由とは?
宇宙のごみ問題も、実は深刻だった!
清掃員のいない宇宙空間はごみだらけ
地球にごみが溜まるのは当たり前のように想像できますが、宇宙というとあまりにも広すぎて、「ごみ問題なんて無縁」と思ってしまいがちです。ところが、あの青々と広大な宇宙空間には、こわれた人工衛星やロケットからはがれた塗装などが浮いたままになっていて、地球規模というより宇宙規模の問題になっているのです。
地球上で出たごみは清掃員が片付けたり、放置されていれば地域で問題になったりするのですが、宇宙には住民も監視員もいないために放置状態になっているのが現状です。
宇宙ごみは秒速8㎞の速さで宇宙を回っている
宇宙ごみ(スペースデブリ)が地球ごみとまったく違う点は、重力がないこと。地球ごみなら重ければ下に落ちたり、液体なら流れたりしますが、宇宙ごみはただひたすらフワフワと、浮いたままの状態になっています。
そしてその宇宙ごみは、なんと秒速8㎞という速さで地球のまわりを回っているのだとか! ライフル銃の速度が秒速800mなので、その10倍もの速度で常に回っているということは、「もしぶつかったらどうなるだろう?」と鳥肌が立ってしまいます!
もしも宇宙ごみがロケットとぶつかったらどうなる?
ロケットエンジンや人工衛星もごみになっている
いま宇宙空間で処分されないまま浮かんでいるごみの数は、2万個以上。ごく小さなチリのようなものから、かなり大きなものまで、大小さまざまあります。中にはロケットエンジンや何メートルもある人工衛星などのビッグなごみも、浮遊しているとか。
たしかに、軌道に乗っていたはずの人工衛星が、何らかの原因で壊れてしまったという話は聞いたことがありますね。「その人工衛星は、いったいどこに行ったのだろう?」と考えたら、まさか自動的に粉砕されるわけもなく、宇宙ごみになるのは当然と言えるでしょう。
宇宙ごみは頑丈なアルミシートにも穴をあける
さて、その宇宙ごみがもしも何かとぶつかったら、いったいどうなるでしょうか?欧州宇宙機関(ESA)が行った極高速衝突実験によると、たとえアルミニウムの小片のような宇宙ごみであっても、アルミシートの数ヶ所に穴をあけてしまう威力があるようです。宇宙船や宇宙服に使われている頑丈なアルミシートがそのようになるということは、超高速で飛ぶ宇宙ごみがいかに怖い存在であるかを、いやでも思い知らされます。
もちろん、ロケットや人工衛星はそんなことで傷つくほどヤワではありませんが、激突したごみの大きさによっては、大きなダメージを受ける可能性もあるでしょう。
「そんな怖いごみなら、早く回収してほしい」というのは、誰もが思うところ。ところが、その壊れた人工衛星を簡単に回収できるかというと、そうでもないようです。軌道に乗る前の人工衛星は回収できても、一度軌道に乗ってしまった場合は、そのための宇宙機でも飛ばさない限り回収は不可能なのです。それには相当の費用がかかるだけでなく、そもそもごみ回収のための宇宙機というものが存在していません。
「じゃあ人工衛星を飛ばす時に、壊れても自分で大気圏に帰ってくるシステムを装備しておけば?」と思う人もいるでしょう。たしかにそれは可能ですが、重装備になることで人工衛星が重くなったり、製作費が膨大になるという問題もあります。
形も大きさも違う宇宙ごみを除去するための技術開発は容易ではなく、なにぶんにも場所が宇宙なだけに、「そのための資金をどこが払うか?」というのも議論になるところ。同じごみでも、日本の都道府県のごみ問題とはまったく違う、難しい課題があるのですね。
徐々に進みつつある、宇宙ごみ対策
宇宙ごみ問題に取り組むJAXA
宇宙ごみに関してはいま全世界が問題視し、JAXA(宇宙航空研究開発機構)でも解決のための研究に取り組んでいます。現状では運用が終了した衛星をできるだけ早く大気圏に突入させたり、いま動いている衛星の邪魔にならないように、高度の高い軌道に移動させるなどの対策をとっているそうです。将来的には壊れた人工衛星を回収し、宇宙ステーションで修理して再利用するなどの計画もあるとか。
また、衛星をどんどん打ち上げるほど、地球周辺の宇宙空間が狭くなり、実際に衛星同士が衝突するなどの例も何件か起きています。こうした事態を避けるために、アメリカの人工衛星を追跡するステーションと連絡を取り合い、衝突の危険があれば軌道を修正するなどの対策をとっています。
かつて日本でも、たばこのポイ捨てが問題になり、駅のホームがたばこの吸い殻だらけになってしまったことがありました。国をあげて対策を立てたことで、そうした事態も徐々に解決していきましたが、美しいホームになるまでには時間もかかりました。そういう意味で、宇宙空間はまだまだ発展途上なのかもしれません。これからの地球をあげての対策に、期待したいところです。