いま社会的な問題になっている「ゴミ屋敷」。ゴミの山を目にするだけでも迷惑なのですが、実はゴミ屋敷が原因となって、さまざまなトラブルも起こっているのです。周辺の住民としては、本当に気が気ではないでしょう。そんなゴミ屋敷にまつわるトラブル事例をご紹介します。
マンションのベランダにゴミを溜め込み、悪臭が問題に
マンションのお隣さんが、実はゴミ屋敷だった!
隣家にゴミが放置されていたら、一軒家でも閉口してしまうところですが、それがマンションのベランダとなると話は深刻です。
賃貸マンションに引っ越しをしてきたAさんは、朝ベランダのサッシを開けた時に、「プ~ン」とどこからか悪臭がするのに驚きました。臭いのもとを探ると、「あ!お隣のベランダが」なんと、契約をする時には気づかなかったのですが、隣家のベランダにゴミがたくさん放置されていたのです。
とうとう耐えられず、転居することに
Aさんは愕然としたものの、「いつか片付けるだろう」と、しばらくは我慢をしていました。ところがそのまま一か月が過ぎ、二ヶ月が過ぎると、さすがの悪臭に我慢できなくなったAさん。大家さんに頼んで厳重に注意をしてもらいました。
しかし、一向にゴミは片付けられるどころか、どんどん増えていきます。再三にわたって大家さんに注意してもらっても、変わる気配はなし! やがて暑い時期に向かい始めると、虫が大量にわきはじめ、思い余ったAさんは「もうこれは引っ越しをするしかない」と決断し、入居からわずか数ヶ月で転居をしてしまったのです。
「賃貸マンションだったから転居もできたけれど、これが分譲マンションだったらどうなったのだろう?」と思うと、思わず鳥肌が立つAさんでした。
住人が夜逃げをした部屋は、ゴミ屋敷だった!
家賃を滞納した住民が逃げた後には、ゴミの山が
以前から家賃を滞納しているアパートの住民が、大家さんの再三にわたる請求に耐えられず、ついに夜逃げをしてしまいました。
1年間分の家賃をすっぽかされた大家さんでしたが、「いつもカーテンがしまったままだし、中がどうなっているかまったくわからない。住民から悪臭がすると苦情がきていたので、かえって良かったかもしれない」とアパートのドアを開けてみると、ビックリ!そこには、信じられないようなゴミの山が、部屋中を埋め尽くしていたのです。
大家さんは家賃を滞納された挙句、“ゴミの山”というとんでもない置き土産をもらい、ただただため息をつくばかりでした。
観光地のホテルにも、ゴミ屋敷があった!
閑古鳥の鳴く温泉地のホテルがつぶれ、家電ゴミが山積みに
ゴミ屋敷というとアパートやマンション・一軒家を思い浮かべますが、実は一般の住宅以外の施設にも、ゴミ屋敷はあったのです!
たとえば、観光地にあるホテルの一例をご紹介しましょう。かつては賑わっていた温泉地の中にも、ここ数年は閑古鳥が鳴いている場所があります。駅前はシャッター通りが続き、歩く人もまばら。以前の活気はまったくありません。
そんな状況の中で、ついに1件の老舗のホテルがつぶれてしまいました。そして廃墟となった跡地には、洗濯機やテレビなど、ホテル内にあったと思われる家電製品が山積みになっていたのです。
ゴミも私的財産?行政が処分しづらい理由
「そんな風になっているのなら、ますます観光に悪影響がでるのでは?早く行政が処分すればいいのに」と思うかもしれませんが、実はそうもいかない事情があるのです。
どこから見ても“ゴミの山”なのは誰もがわかっていても、それが不法投棄なのか土地所有者の財産なのか、行政側としては判断することができません。そこでホテルの経営者と協議することになるのですが、解決までには時間もかかるようです。
国や地方自治体も、ゴミ屋敷対策に積極的
ゴミ屋敷の増加に危機感を覚え、自治体が片付けに乗り出す
こうしたゴミ屋敷の事例は全国にたくさんあり、自治体によってはゴミ屋敷対策条例を施行して、本格的な対処に乗り出しているケースもあります。たとえば東京都足立区では、近隣に著しい迷惑を及ぼすゴミ屋敷をなくすべく、通称「ゴミ屋敷条例」と呼ばれる条例を制定しています。最大100万円まで区が撤去費用を負担し、区内のゴミ屋敷の片付けを行うという、極めて積極的なゴミ屋敷対策です。
参考:ゴミ屋敷の片付けに不用品回収業者を依頼する?ゴミ屋敷の清掃費用はおいくら?
また東京都荒川区では、「荒川区良好な生活環境の確保に関する条例」の中に、ゴミ屋敷対策を盛り込んでいます。近隣住民からの苦情があった場合は立ち入り調査を行い、住民が拒否または無視した場合は、氏名公表と10万円以下の罰金。そして、手を尽くしても改善されない場合は、行政がゴミの撤去を行えるというものです。
地域から孤立する人をなくすことが、最善の方法
国としても「空家等対策の推進に関する特別措置法(特措法)」によって、全国で増え続けるゴミ屋敷対策に乗り出しています。しかし、ゴミ屋敷の問題は、ゴミを片付けただけでは解決しません。地域のコミュニティから外れてしまったひとり暮らしの高齢者など、社会と孤立した人々が、秩序を忘れてゴミを溜め込んでしまうという現状もあるようです。地域が連携して一人ひとりの住民を見守り、孤立する人をなくしていくことが、ゴミ屋敷をなくす最善の方法なのでしょう。